住宅ローンの最後の返済が終わり、銀行の封筒を大事な書類の箱へしまった。それから数年。家を売る準備を始めて「抵当権は抹消済みですか」と聞かれ、少し記憶があやしくなることがあります。
ローンを完済しても、抵当権の登記記録が自動で抹消されるわけではありません。今の登記と銀行から届いた書類を照合し、未手続なら決済前の準備に組み込みましょう。この記事は、すでに完済した家が対象です。売却代金で残債を返す場合は、金融機関・仲介会社・司法書士で同日の決済手順を調整する別の段取りになります。[1]
確認する場所は、通帳ではなく「今の登記」
返済の記録と、登記の手続が済んだかは別々に確認します。方法は大きく二つです。
- 登記事項証明書を取得する。法務局の証明書請求案内から、オンラインで請求し郵送・窓口で受け取る方法等を確認できます。
- 登記情報提供サービスで内容を確認する。サービスの案内にある有料の閲覧方法です。PDFを表示・保存できますが、証明文・公印が付いた登記事項証明書そのものではありません。
抵当権の記録を見るなら、所有者の氏名等だけの「所有者事項」では足りません。登記情報提供サービスでは不動産登記情報の「全部事項」を確認する入口を使います。土地の地番・建物の家屋番号等を、手元の登記関係書類で確認しておきましょう。住所の住居表示と同じとは限りません。申請先等に提出する資料が必要なら、先に必要な種類を聞いて重複取得を防ぎます。[3][4]
乙区の「抵当権設定」と、それに対応する抹消を照合する
登記記録の権利部には、所有権の甲区と、それ以外の権利を記録する乙区があります。抵当権は乙区で、設定の順位番号・抵当権者・債権額等を見て、対象の銀行・ローンに関する抹消が記録されているかを照合します。土地と建物があるなら、片方の確認だけで終えないようにします。[5]
過去の設定内容が見えるだけで「未抹消」と即断しないことも大切です。履歴を含む資料では、過去の記録も表示されます。設定が複数ある、根抵当権と書かれている、対応関係が分からない場合は、PDFや証明書を司法書士等に見てもらいましょう。法務局の完済者向け案内も、抵当権と根抵当権を分けています。[1]
銀行の封筒には、一般にこの3種類が入っている
法務局の案内では、抵当権抹消に一般に必要な添付情報として、次を挙げています。通常は抵当権者である金融機関等から届くものです。[2]
- 登記原因証明情報:解除証書・弁済証書などの表題で、抵当権が消滅した原因を示す書類。
- 金融機関等の委任状:抹消の申請を所有者等へ委任する書類。
- 抵当権者の登記識別情報または登記済証:抹消対象の抵当権に関する情報・書類。
3番目は、売主自身の所有権の権利証・登記識別情報を探す話と混同しやすい箇所です。書類の表題だけで判断せず、誰の、どの登記についてのものかを確認します。足りないものがあれば、完済した金融機関へ、再交付等の可否と必要な手続を問い合わせてください。「全部まとめて再発行できる」とは限りません。
住所・氏名が変わっていたら、抹消の前の手続も確認
法務局の案内は、現在の所有者の氏名・住所が登記と一致するかを最初に確認し、一致しない場合は先に変更の登記等を行う流れを示しています。所有者が亡くなっている場合も、その事情を伝えて必要な登記を確認します。[1]
自分でオンライン申請する選択肢もありますが、紙の解除証書や委任状等があると、添付書類の郵送・持参が必要になる場合があります。「ネットなら今日で全部終わる」と考えず、電子署名等の準備と手元の書類が対応するかを、法務局の案内で確かめてください。[2]
売却の予定があるなら、この情報を添えて相談する
手続案内の入口は、法務局公式サイトの管轄・手続案内です。申請を依頼したい場合は司法書士へ。相談先が決まっていなければ、日司連の地域別相談センター一覧で探せます。予約・相談費用・受任の範囲は各窓口で確認します。[6]
初回の連絡メモ(編集部作成)
対象の土地・建物/現在の登記を確認した日:__
完済した金融機関・時期/抹消手続を頼んだ記憶の有無:__
銀行の書類で手元にあるもの・ないもの:__
登記上と現在の氏名・住所/相続・共有の事情:__
売却相談・契約・決済の予定:__
聞きたいこと:未了の登記、必要資料、実費と報酬、完了までの見込み。
完済は大きな区切りです。書類の箱をもう一度開けるのは少し面倒でも、買主が決まる前なら日程を組みやすくなります。返済の「終わった」と登記の「済んだ」を、ここでそろえておきましょう。



