契約・引き渡し

兄は実家を売りたい、妹は残したい。共有不動産を話し合う前に決めること

売りたい人と残したい人がいる実家。共有土地の裁判例を手がかりに、居住希望、評価額、持分、買取資金を分けて整理します。

違う向きを向く二脚の椅子と小さなテーブルの線画
架空のイメージです。実在の物件・人物・施設・アプリケーションとは関係ありません。

実家を売ってお金で分けたい人と、思い出があるから残したい人。きょうだいでも希望はそろいません。名義を共有にしたまま話が止まると、固定資産税や管理の負担だけが続くこともあります。

家を残したい気持ちと、他の共有者の持分を取得する資金は、分けて話す必要があります。裁判例を手がかりに、売るか残すかの二択になる前に整理できることを考えます。

売りたい側と、土地を残したい側が争った判決

不動産適正取引推進機構が紹介する2007年4月26日の東京地裁判決では、相続等によって共有になった土地が争いになりました。一方は第三者に売って換金することを希望し、もう一方は土地に建物を建てて住みたいと考えていました。現在住んでいる実家そのものの売却事例ではなく、共有土地の分割を巡る事例です。[1]

裁判所は、土地を残したい側が期限内に他の共有者へ代償金を払って単独所有にする方法を優先。支払いがなければ他方による取得、それも行われなければ競売とする、条件付きの判断をしました。

東京地裁2007年4月26日判決の紹介記事(RETIO2007年11月号)の要約。判決後の支払い完了は確認できません。出典[1]

支払能力等を踏まえた個別の判断です。「残したいと言えば必ず優先される」と読み替えることはできません。タイトルの兄妹は読者の状況を示す例で、判決当事者の関係を再現したものではありません。

「売る・残す」のほかに、持分を取得する道がある

共有を解消する考え方には、不動産を分ける、売却して代金を分ける、一人が他の人の持分を取得して金銭で調整する、といった方法があります。現行民法258条には、裁判による分割方法として金銭負担を伴う持分取得も定められています。2023年4月施行の改正で明文化された点です。[2]

相続したばかりで遺産分割が未了なのか、分割後に通常の共有になっているのかでも、相談する手続きが変わります。「相続した家だから、いつでも同じ手続き」と決めつけず、今の権利関係を確かめます。

家を残す希望と、持分・評価額、支払える資金を分けて整理します。特定の裁判例から、残したい側が必ず優先されると判断することはできません。
家を残す希望と、持分・評価額、支払える資金を分けて整理します。特定の裁判例から、残したい側が必ず優先されると判断することはできません。 図を大きく見る

評価額と、実際に支払える額を同じ紙に書く

説明のための仮の例です。不動産全体の評価額を2,000万円、持分を各2分の1と置くと、相手の持分に対応する金額は1,000万円です。これは税務評価や裁判所の鑑定額を示すものではなく、実際の売買代金や費用を決める例でもありません。

家を残したい人は、この金額を現金や借入れで用意できるか、その後の維持費も払えるかを検討します。「いつか払う」という希望だけでは、相手の資金計画は立ちません。支払時期と資金の裏付けまで話し合いに載せる必要があります。

評価の前提が違うと、同じ物件の話でも交渉がすれ違います。査定日、土地建物の状態、売却費用を含むかをそろえ、必要に応じて専門家の評価を使うかも相談しましょう。

住んでいる人、払っている人、名義の人を分ける

長く管理してきた人、実家に住んでいる人、名義上の共有者が一致しないこともあります。税金や修繕費を誰がいくら払ってきたか、今後誰が使いたいかを、持分の話と分けて記録します。

これまでの負担を全て売却代金から当然に引ける、と自己判断しないでください。費用の記録と、清算についての合意は別です。領収書や振込記録、過去の取り決めを持って、整理の仕方を専門家に確認します。

次に話す日までに、何を確認するか決める

家族の事情は変わります。住み続けたい人の転居や介護、修繕の発生、共有者の相続などが重なれば、話し合う人数や負担も変わり得ます。将来の価格上昇だけを待つ前に、次の確認日を設けましょう。

合意が難しい場合は、登記事項証明書、相続関係、評価資料、費用記録、各人の希望をそろえて弁護士等へ相談します。相手が反対しているからと、自分の判断で不動産全体の売却契約や引渡しを進めないことも大切です。

話し合いの最初に四つ書く

誰がどの持分を持つか/誰が使いたいか/評価の前提をどうそろえるか/買取資金をいつまでに確認するか。気持ちを否定せず、実現に必要な条件を紙にするところから始めましょう。

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出典・参考資料

  1. 不動産適正取引推進機構RETIO68号・全面的価格賠償による共有物分割の裁判例(2007-11公表/判決 2007-04-26)
  2. 国土交通省九州地方整備局・共有物分割と民法改正の解説(公表・更新日の表示なし)

情報確認日:2026年10月15日。将来の見方や実践項目は、公開資料を踏まえた編集部の考察・提案です。仮の計算例は本文に条件を記載しています。

この記事について

一般的な売却の考え方を紹介しています。個別の費用や契約条件は、依頼先の不動産会社などに確認してください。