管理組合から届いた、修繕積立金の値上げ案。毎月の支出が増えると思うと、「買う人に嫌がられる前に売ったほうがいいのでは」と考えたくなります。でも、積立金が安いマンションのほうが、いつも有利なのでしょうか。
修繕積立金は、将来の工事のためにみんなで準備するお金です。月額が低くても必要な工事に足りなければ、あとから別の負担が生まれる可能性があります。売主が見るべきなのは、今の支払額と、その先にある計画の両方です。
安い月額は、安心の証拠とは限らない
国土交通省の2023年度マンション総合調査では、長期修繕計画の予定額に対して積立金が不足している管理組合は36.6%でした。これは調査に回答した組合についての結果で、あなたのマンションが不足していると決まる数字ではありません。[2]
SUUMOジャーナルが2026年6月に紹介した2025年度の首都圏中古マンションの集計では、修繕積立金の月額平均は1万3,910円でした。ただ、売買された物件の平均なので、同じマンションの積立金がその割合で上がったという意味ではありません。[1]
平均より安いか高いかだけでは、必要な資金を判断できません。建物の規模、設備、工事履歴、積立残高が違うからです。比較するときは「この金額で、どこまでの工事をまかなう計画なのか」と一歩踏み込みましょう。
値引き交渉のきっかけになった、説明の不足
SUUMOが紹介した神戸市のKさんは、2020年にマンションを1,740万円で売却しました。交渉では、建具の不具合に加え、近く予定されていた修繕積立金の値上げが十分に伝わっていなかったことが問題となり、追加の値引きに応じたとされています。[3]
この事例で、値引き額のすべてが積立金のせいだったとはいえません。複数の論点があり、短期間で売買が成立しています。教訓は「値上げがあると売れない」ではなく、「買主が後から知ると交渉がやり直しになり得る」という点です。
買主は購入代金に加えて、毎月の返済と維持費を計算しています。積立金の変更を早い段階で示せれば、その条件を含めて検討してもらえます。説明が遅れると、金額だけでなく情報への信頼まで揺らぎます。
売り出す前に読む、三つの資料
まずは長期修繕計画。大規模修繕だけでなく、設備の更新がいつ予定され、どの費用を見込んでいるかを確認します。作った時期が古ければ、その後の工事費の見直しが反映されているかも聞きたいところです。
次に、積立金の残高や滞納状況がわかる資料。将来の収入を含めた計画と現在の残高を分けて読みます。「残高が多い」だけでも安心とはいえず、近く大きな支出が予定されているかが重要です。
そして総会の議事録。値上げや一時金が決定済みなのか、検討中なのかで説明が変わります。資料の取得方法や費用は管理会社に確認し、個人情報を含む書類の扱いは仲介会社と相談してください。
工事の前後で、誰が何を負担するか
工事前は、計画や資金に関する質問が出やすくなります。工事後は履歴を示せますが、工事をした金額がそのまま売値に上乗せされるわけではありません。待つ間の住居費も含めて判断します。
一時金や値上げの時期が売買と重なるなら、請求時期、引き渡し時期、管理組合の定め、契約での精算方法を確認しましょう。「売るのだから払わなくてよい」「引き渡し後なら必ず買主負担」と自分だけで決めないことが大切です。
これからは、負担の少なさと見通しをセットで
今後、工事費が上がれば、計画の見直しや追加の負担を検討する組合が出る可能性があります。一方、早めに必要額を確保する計画は、買主が将来の支出を考える材料になります。積立金の値上げと資産価値の下落を、単純に結びつけることはできません。
売却で伝えたいのは「維持費が安い家」だけでなく、「何にいくら必要かを説明できる家」という情報です。見通しの良さがどの程度価格に反映されるかは、地域や買主によって異なります。
管理会社への確認メモ
「長期修繕計画の最新版、積立残高、決定済みと検討中の値上げ・一時金を確認したい」。この一文から始めて、仲介担当者と買主へ渡す説明を整えましょう。


