相続した実家を売る準備だけでも、書類探しはひと仕事です。そのうえ、前の道路の持分や、親が昔持っていた山林まで調べるとなると、どこから手を付ければよいのでしょうか。家族の記憶だけを頼りにするのは、少し心細い作業です。
その手掛かりとして、2026年2月2日に始まったのが所有不動産記録証明制度です。氏名・住所等を条件に、所有権の登記を一覧で調べられます。何もかも記憶で補わずに済むのは助かりますが、どこまで載る一覧なのかを知って使いましょう。
土地ごとの登記から、人の名義を手掛かりに探せる
従来の登記記録は土地や建物ごとに作られ、全国から特定の人の所有不動産をまとめて抽出する仕組みがありませんでした。法務省は、相続人が不動産を把握しきれず、見逃した土地の相続登記がされない問題を、制度を設けた背景として説明しています。[1]
そこで、登記名義人の氏名・住所等を手掛かりに、所有権の登記を一覧にする仕組みが設けられました。ただし、検索条件に一致しない記録など、載らないものもあります。「見つかった土地」と「まだ探す必要がある土地」を整理する入口として使うと、次の調査へ進めます。[1]
請求できるのは、本人や相続人など
請求できる人は、所有権の登記名義人、その相続人その他の一般承継人などです。代理人による請求もできます。親が存命のうちに、子であるという理由だけで誰でも親の名義を検索できる制度ではありません。
相続人が請求する場合には、本人確認等に加え、相続関係を示す情報などが必要です。過去の氏名・住所を検索条件にするなら、それを証する情報も確認します。法務局への書面・郵送やオンラインの方法があり、必要書類は請求方法によって異なります。[1]

旧住所や改姓の記録が、検索の手掛かりになる
長く住んだ家でも、登記には購入当時の住所が載っているかもしれません。別の不動産だけ、改姓前の氏名が残っている可能性もあります。検索条件と違う氏名・住所等で記録されている不動産は、一覧化されないことがあります。
現在の氏名・住所の一組だけで「ほかにはない」と結論を出さないようにします。古い権利証、契約書、戸籍の附票等を手掛かりに、どの条件で請求するかを法務局や専門家へ相談しましょう。条件を追加すれば、証明書の手数料も変わります。
載らない不動産と、費用の数え方を知る
所有権の登記がなく表示に関する登記だけの不動産や、登記簿がコンピュータ化されていない不動産などは検索対象から外れます。審査中で登記にまだ反映されていない情報も含まれません。一覧の内容は、その限界を踏まえて読みます。[1]
書面請求の手数料は、検索条件1件につき1通1,600円です。例えば2条件で各1通なら3,200円となり、証明書全体が一律1,600円という計算ではありません。オンライン請求は受取方法によって金額が異なり、戸籍等の取得費用や郵送費等は別に見込みます。[1]
名寄帳、権利証、現地の情報と突き合わせる
一覧を受け取ったら、固定資産税の明細、自治体の名寄帳、権利証など、手元の資料と物件ごとに照合します。照合の仕方の例として、実家の敷地とは別に道路持分が載っていた場合を考えてみます。その地番を仲介会社へ伝え、実家と一緒に買主へ移す対象か、確認してもらいましょう。一覧で見つけた情報を、売却の準備へ結び付ける作業です。
証明書を取ることと、相続登記や売却の手続きが完了することは別です。将来、親の資産を整理する場面でも、一覧の作成日と検索条件を残しておくと、後の調査をつなぎやすくなります。
請求前に集める資料
現在と過去の氏名・住所/相続関係を示す情報/固定資産税の明細や名寄帳/権利証や古い契約書。何をどの条件で調べ、何が未確認かを一つの表に残しましょう。


