家の前の私道は、毎日通ってきた道です。持分もあるので、売却のときにあらためて調べるものとは思わないかもしれません。けれど、道の下の水道管は誰のものかと聞かれると、急には答えられないこともあります。
買主が管を交換したり、新しく引き込んだりするとき、今まで通れていたことだけでは話が済みません。道路の所有関係、通行の根拠、地中の配管の所有と工事条件は、それぞれ確認します。普段は意識しない道の下まで、売却前に調べておきましょう。
私道の全員同意で、工事が止まる問題があった
法務省の「所有者不明私道への対応ガイドライン」第2版は、共有私道の補修等で、事実上共有者全員の同意を得る運用がされ、工事に支障が生じた問題を整理しています。2022年6月の改訂は、2023年4月1日施行の改正民法を踏まえたものです。[1]
工事の扱いは内容によって異なります。保存、管理、軽微な変更、その他の変更などを区別し、必要な判断や同意の範囲を検討します。「いつも全員同意が必要」「共有者なら何でも単独でできる」という、どちらの一律説明でも捉えられません。
法務省の設例も、道路と給水管を分けている
その違いを考える材料になるのが、同ガイドラインの事例13です。私道の共有者が自宅に水を引くために、道の下にある共有給水管へ接続する場面が設定されています。実際の工事の体験談や判決ではなく、法律の扱いを検討するための設例です。[2]
ここでは、道路を掘ることと、給水管を使うことを分けて検討します。道と管で所有者の範囲が違うことがあるからです。改正民法による設備使用の仕組みについても、他に供給を受ける方法がないことや、事前の通知等の条件が説明されています。[2]
自分の家の調査に置き換えるなら、道の持分を確認して終わらせず、配管の図面や所有関係までたどる、ということになります。まずは道路の地番から、手元の資料を整理しましょう。

最初に、道の地番と持分を調べる
実家の敷地の登記だけでなく、前面の道がどの土地に当たるかを、地図と登記で確認します。複数人が一筆を共有する場合と、細かく分かれた通路の土地をそれぞれが持つ場合では、確認の進め方も異なります。
売主の持分を買主へ移す予定か、相続登記が終わっているか、他の所有者や連絡先が分かるかを整理します。宅地を売る話の中に、道路持分の引継ぎも含まれているかを明確にします。権利の調査は仲介会社や司法書士へ、工事の計画は施工業者等へつなぎます。
承諾書は、何を誰に認めた書類かを読む
通行・掘削の承諾書が残っているなら、対象の土地、承諾した人、利用する人、工事内容、期間、費用負担、買主へ引き継げるかという記載を確認します。紙があることだけで安心せず、今の所有関係や予定する工事と合うかを見ます。
通行を認めた書類が、そのまま配管工事の承諾になるとは決めつけません。逆に、承諾書が見つからないだけで直ちに工事不可とも判断せず、法律上の権利や既存の合意を含めて専門家に検討してもらいます。通知や費用負担が必要になる場合も、個別に確認します。[2]
買主の将来の工事まで、説明できる準備をする
いま水が使えることと、将来、管を更新したり新しく引き込んだりできることは別の確認です。建替え予定がある買主なら、接道に関する建築法令上の条件や、工事車両の利用も調査の対象になります。私道持分があるだけで、建替えの可否まで決まるわけではありません。
分かっている権利と、まだ調べていない工事条件を分けて説明します。所有者と連絡がつかないときも、売主が独断で工事を約束せず、ガイドラインのどの場面に近いかを専門家と確認しましょう。確認に必要な時間は、売買契約や引渡しの日程に織り込みます。
仲介会社へ渡す四つ
道路の登記事項と地図/自分の持分/通行・掘削等の承諾書/配管の図面と分かる範囲の所有者情報。見つからない書類も一覧にし、将来の工事の確認担当を決めましょう。


