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20年近く無人でも「空き家」ではない?大阪の長屋倒壊から考える

20年近く無人の一戸でも、隣に人が住む長屋は空家法の対象外に。大阪の倒壊報道と2026年の市の計画を照らし、別の対応と難しさを読みます。

連続した軒と隣り合う壁が分かる長屋の線画
架空のイメージです。実在の物件・人物・施設・アプリケーションとは関係ありません。

20年近く誰も住んでいない家が倒れた。それなのに、空き家対策の法律の対象ではない。2026年10月に関西テレビが伝えた大阪市生野区の長屋の問題は、言葉だけ聞くと、どうにも腑に落ちません。

鍵になるのは、無人だった「一戸」と、法律が見る「建物」の単位の違いです。そして、空家法の対象外であることは、危険な家屋に行政が一切対応できないという意味ではありません。報道と大阪市の現行計画を照らすと、対応の難しさがもう少し具体的に見えてきます。

無人の一戸にも、隣の生活がつながっている

関西テレビの10月7日公開の記事は、長期間無人だった長屋の一部が倒壊し、近隣住民の生活に影響している現場を取材しています。市は同じ棟の一部に居住者がいるため、空家法の対象にはならないと説明。倒壊した部分を別の建物と捉える撤去対応などを検討している、と報じられました。放送は6日ですが、元記事に倒壊日の明記はなく、放送日を事故当日とは扱えません。[1]

本記事で確認できたのは、この検討段階までです。その後に撤去が完了した、近隣の人が元の生活に戻れた、といった結末は確認できていません。

長屋では、外から見て玄関が分かれていても、屋根や壁などが隣と連続しています。自分の一戸が無人になっても、建物全体には誰かが住んでいる。単独の空き家と同じ感覚で整理しにくいのは、このためです。

大阪市の計画は「法律の空家」と「広い意味の空き家」を分ける

大阪市が2026年4月に策定した第3期空家等対策計画は、空家法の「空家等」には、建物内の一部だけが空室の共同住宅や、一部に居住世帯のある長屋は含まれないと整理しています。一方、市の計画自体は、一部居住長屋の空き住戸も対象に含めています。つまり「法律上の対象から外れる」と「市の対策の対象から外れる」は、同じではありません。[2・本文3頁]

日常の会話では、誰も住んでいない一戸を空き家と呼んで差し支えないでしょう。ただ、行政が調査し、所有者へ指導し、必要に応じて強制的な措置を取るときには、どの法律に基づいて、どの建物へ行うのかが必要になります。呼び方の違いの背後には、使える権限と手続の違いがあります。

空家法が使えなくても、別の対応はある

同計画は、空家法に該当しない住家や一部居住長屋でも、放置すれば倒壊などの危険がある建物について、計画調整局が建築基準法に基づき所有者等の調査や指導等を行うとしています。緊急の人的危険や道路上の落下物では、消防局や建設局による別の法律に基づく対応も示しています。[2・本文38頁]

ただ、対応の入口があることと、すぐに建物全体を撤去できることの間には距離があります。隣の人が住み続けているなら、その安全や生活、建物同士の関係を含めて考える必要があるからです。今回の現場で報じられた対応を、ほかの長屋にもそのまま当てはめることはできません。

この点で、今回のニュースを「行政は何もできない」の一言で終わらせるのも、「別の法律で簡単に解決できる」と読むのも、どちらも実態を取りこぼします。制度は一つではないものの、現物と権利関係に応じた判断が残る問題なのです。

実家が長屋なら、空室期間だけでなく「つながり」を伝える

似た家を相続した人、売却を考える人は、相談時に「何年空いているか」だけを伝えがちです。長屋では、それに加えて、同じ棟のどこに人が住んでいるか、屋根や壁がどうつながって見えるか、雨漏りや傾きがどこで起きているかが、現場確認の手がかりになります。見た目で構造や権利を断定せず、手元の図面・登記資料も合わせて見てもらいます。

大阪市内では、区役所が空き家対策の拠点です。現行計画と各区の案内を入口に、所在地と「一部に居住者のいる長屋である」こと、現に困っている状態を伝えると、単独の空き家だという前提の行き違いを減らせます。危険箇所を確かめようと、自分で傷んだ室内や屋根へ入る必要はありません。[2・本文39頁][3]

売却の見積りでも、解体費の安さだけでは比較しにくい物件です。隣との関係を確認したうえで、残して売る案と解体する案がそれぞれどこまで可能かを聞く。長屋では「家一軒の話」の中に、隣の暮らしも入っています。早く相談する意味は、結論を急ぐことより、その関係を傷む前から整理できるところにあります。

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