家を売ろうと思った矢先に、利上げのニュース。「住宅ローンが高くなったら、買う人がいなくなるのでは」。売主にとって気になるのは、経済の専門用語より、自分の家に買い手がつくかどうかでしょう。
考える入口は、買主の毎月の家計です。物件の値段が変わらなくても、同じ家を買うための返済額が増えれば、買主は広さや場所、予算を選び直すかもしれません。ただ、その変化がすべての家に同じように起きるわけではありません。
日銀の金利と、住宅ローンの金利は別の数字
日本銀行は2026年9月18日、短期金利の誘導目標を1.25%程度とする方針を決め、9月24日から適用しました。これは銀行間の短期市場に関する政策で、住宅ローン利用者全員の適用金利がその日に1.25%になる、という意味ではありません。[1]
ローンの条件は金融機関、固定・変動の違い、契約時期、優遇条件などで変わります。売主が把握したいのは、ニュースの数字を直接物件価格に当てはめることではなく、今の買主がどんな返済条件で検討しているかです。
毎月10万円なら、買える金額はどう変わる?
金利の影響だけを見るため、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、毎月返済10万円、金利は全期間一定という仮定で計算してみます。実際の商品金利や融資可能額を示すものではありません。
| 仮定の年利 | 借入元本の目安 |
|---|---|
| 1% | 約3,543万円 |
| 2% | 約3,019万円 |
同じ毎月10万円でも、差は約524万円。自己資金が同じなら、物件に回せる予算にも影響します。この試算に融資手数料、税金、管理費、修繕費は含めていません。銀行の審査結果を予測する計算でもありません。
買主は予算を増やすほか、駅からの距離を延ばす、築年数を広げる、面積を小さくするという調整もできます。あなたの家が、その選び直しの中で候補になる可能性もあります。
過去の市場では、金利だけで価格は決まらなかった
過去の成約を見ても、一つの経済ニュースだけで住宅価格の方向は決まりません。東日本レインズの2024年10〜12月期の築年数別集計では、首都圏中古マンションの成約価格と成約㎡単価は、すべての築年帯で前年同期を上回りました。[2]
さらに2026年2月の月例集計でも、首都圏中古マンションの平均成約価格は前年同月より高い水準でした。金利上昇の懸念がある時期に、価格の上昇も観測されたわけです。[3]
もちろん、これは利上げの影響がなかった証明ではありません。所得、新築の供給や価格、地域の人気、売れた物件の構成などが同時に変わります。「金利が上がったから、必ず家が下がる」という短絡を避けるための材料です。
売る側も、次の住まいの買い手になる
住み替えなら、今の家の売値だけで判断すると見落としが生まれます。高く売れても、次の住まいがそれ以上に高く、ローン返済も増えるなら、家計は楽になりません。
最初に、売却後の手取りと次の住まいの総費用を一枚に並べましょう。売る家のローン残高、売却費用、買う家の諸費用、引っ越し、仮住まいが必要ならその費用も含めます。現金で買う人と、新たに大きく借りる人では、同じ市況でも選び方が変わります。
今後を考えるなら、三つの条件を見ておく
今後さらにローン負担が増え、所得が追いつかなければ、買主の価格交渉が強まる可能性があります。一方、所得が伸びれば負担増を吸収できる人もいます。需要が強い場所で売り物件が少なければ、価格が下がりにくいことも考えられます。
そこで確認したいのは、地域の成約件数、似た物件の成約価格、そして内覧客の具体的な予算です。日銀の次の判断を当てようとするより、自宅の購入層に起きている変化を追うほうが、売却の相談に使えます。
担当者に聞く、次の一言
「この家を買う人は、どの価格帯で探していますか。最近、ローンや予算を理由に見送った例はありますか」。住み替え先のローン試算も同時に取り、今売る案と半年後に売る案を比べてみましょう。


