売却の流れ

相続した土地が売れない。「国に引き取ってもらう」にも、お金と条件がある

草刈りと税金だけが続く土地にも、手放す道はあるのでしょうか。国庫帰属の実績、利用できない土地、事前にかかる費用から、売却と並べて検討します。

草の伸びた小さな土地と境の柵の線画
架空のイメージです。実在の物件・人物・施設・アプリケーションとは関係ありません。

年に何度か草を刈りに帰り、固定資産税の通知が届く。買い手を探しても動きがない。相続した土地が、使う予定のないまま毎年の予定と家計を占めていくことがあります。

その土地を国に引き取ってもらう制度が、2023年4月27日に始まりました。相続土地国庫帰属制度です。ただし、無料で何でも引き取る仕組みではありません。売却と比較するには、申請できる人、土地の状態、手放すまでの費用を順番に見る必要があります。

帰属3,119件の一方で、別の引き受け先が見つかった例も

法務省の速報では、2026年8月31日までの申請は全国で5,997件、国庫への帰属は3,119件でした。同じ時点で1,139件が取り下げられ、そのうち586件は有効活用の見込みが生じたためとされています。例として、隣接地所有者からの引き受けの申し出や、農業委員会の調整による活用の見込みが挙げられています。[1]

帰属件数を申請件数で割って、自分の土地の成功率とは考えられません。審査中の案件が含まれ、土地ごとに条件が違うからです。また、取り下げの例は「活用の見込み」であり、すべての引渡しや売買代金の受領まで確認された数字ではありません。

それでも、手放す道が国庫帰属一つに限られないことは読み取れます。制度を調べる作業と、地域で次の使い手を探す作業は、並べて進める余地があります。

国への申請後に、隣の土地の所有者から引き受けの申し出があった例も。

法務省が示す申請取下げ理由の例を要約。活用の見込みが生じた段階であり、引渡し完了の報告ではありません。
申請状況の速報(2026年8月31日時点)
土地を手放す道は、一つじゃない。。売却。地域へ引き継ぐ。国庫帰属。費用と、引き受けの条件を比べる
引き受けの見込みと、所有権の移転完了は区別します。 図を大きく見る

最初に確かめるのは、相続と土地の状態

基本的には、相続または相続人への遺贈で土地の所有権等を取得した人が対象です。共有地には共同申請などの扱いがあるため、一人の判断だけで進めないよう確認します。自分で買った使わない土地ならすべて利用できる、という制度ではありません。[2]

建物がある土地、担保権等が設定された土地、境界が明らかでない土地などには申請できない条件があります。さらに、申請できても、管理に過分な費用や労力が必要な土地は承認されないことがあります。[2]

2026年8月末の不承認理由には、地上の物が管理・処分を妨げるものや、国による追加整備が必要な森林などが実際に挙がっています。空き地に見えることと、そのまま管理を引き継げることは同じではありません。[1]

「20万円で終わる」と決めて、先に壊さない

申請時の審査手数料は土地一筆につき1万4,000円で、取り下げや不承認でも返還されません。承認後の負担金は20万円が基本ですが、市街化区域等の宅地・農地や森林などでは面積に応じた計算となる場合があります。[2][3]

さらに、書類の取得、必要な調査、撤去や整備をするならその費用、専門家へ依頼するなら報酬も考えます。これらを負担金と混ぜず、項目ごとに見積もることが大切です。

建物があるからといって、制度の利用を見込んで先に解体するのは慎重に。解体後も別の条件で承認されない可能性があります。古家付きのまま売る選択肢も含め、工事の発注前に法務局と不動産会社へ相談しましょう。

20万円だけで、終わるとは限らない。。申請:一筆1万4,000円。準備:調査・整備など。承認後:負担金は20万円が基本。手数料は返還なし。負担金は土地により増額
審査手数料は返還されません。負担金には面積計算や合算等の扱いがあります。 図を大きく見る

売却・引き継ぎ・国庫帰属を、総費用で比べる

比較表には、受け取る代金だけでなく、手放すために払うお金も書き込みます。低い価格でもそのまま売れる案と、整備費を払って国庫帰属を目指す案では、手元のお金が逆転することもあり得ます。これは比較の考え方であり、特定の土地についての試算ではありません。

当面保有する案では、年間の税金、草刈り、交通費、外部へ頼む管理費を並べます。自分の作業時間も別欄に記しておきましょう。ただし、将来の修繕や災害対応費まで一定と仮定して、何年で必ず得になると決めることはできません。

隣地へ引き継ぐ場合や農地を売る場合も、権利関係や必要な手続きは確認が必要です。「代金はいらない」と伝えるだけで、管理や所有権の問題が片付くわけではありません。

相談のあとにも、管理と支払いの予定を残しておく

法務局への相談は予約して行います。登記の資料、所在地がわかる図、現況写真、これまでの利用や管理の経緯を持参すると話を進めやすくなります。事前相談での見解は承認を保証するものではなく、審査には一定の時間が必要です。[4]

承認された場合も、負担金の通知が届いた日の翌日から30日以内の納付が必要です。申請しただけでは所有権は移りません。結果を待つ間の草刈りや連絡先、納付資金をどう確保するかまで予定に入れます。[3]

今後、運用実績が増えれば判断材料は蓄積しますが、条件緩和や負担金の値下げが続くと決まったわけではありません。今の条件で比べ、地域の引き受け先の状況が変わったときに見直せる準備が役立ちます。

申請だけでは、土地は移らない。。事前相談。申請・審査。承認後、負担金を納付。通知到達の翌日から30日以内に納付
事前相談は承認の保証ではありません。申請だけでは所有権は移りません。 図を大きく見る

まず「年いくら、何日」を書き出す

去年の税金と管理費、土地へ行った回数を一枚にまとめます。次に所在地と登記名義を確認し、法務局の相談を予約してください。費用を払う工事や申請は、比較の材料がそろってから判断しましょう。

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