不動産会社選び

親の店付き住宅、次の持ち主は「住む人」とは限らない

閉めた店の大きな窓や広い土間は、別の商いには長所になるかもしれません。北海道の再生事例から、地域の創業支援と売却活動をつなぐ準備を考えます。

看板のない元店舗のショーウィンドウと入口
架空のイメージです。実在の物件・人物・施設・アプリケーションとは関係ありません。

親が営んでいた店のシャッターを、もう何年も開けていない。奥や二階には住居があるけれど、普通の一戸建てとしては間取りが変わっている。そんな物件を前に、「店だった部分がなければ売りやすいのに」と思うことはありませんか。

大きな窓、広い土間、通りに面した入口。住まいとしては使いづらい部分が、店や工房を始めたい人には欲しい条件になる場合があります。次の使い手を、住む人だけに絞らず探す視点です。

倉庫が人の集まる場になり、古い建物が次の店へ

2026年10月のSUUMOジャーナルは、北海道幕別町の本町エリアで、空き倉庫の活用を起点に5年で18店舗が開業した動きを紹介しています。元の司法書士事務所がカフェなどに使われ、元の焼肉店が別の飲食店になるなど、建物の用途を引き継ぎ直した例が見られます。[1]

ここから確認できるのは、閉じた建物に実際に新しい使い道が生まれたことです。18件すべてが売買だったのか、所有者はいくら受け取ったのかまでは資料で確認できません。近隣の売却価格が上がったという証拠でもありません。

「明るく、人の存在も感じられる施設にしたかった」

「ふるさとキッチン ミナ」の塚本逸彦さん。元司法書士事務所の大きな窓について。
SUUMOジャーナルの取材より一部引用(2026年10月5日)

それでも、住宅を買う人向けの広告だけでは届かない需要がある、という問いは残ります。自分の物件の近くで、新しく店を開いた人はどこへ相談したのか。その経路をたどることが、次の一歩になります。

この店、次は誰が使う?。住まい。仕事場。商いの場。使える用途・必要な許可は個別に確認
どの用途で使えるかは、建物・立地・必要な許可等の確認が必要です。 図を大きく見る

売り手が改装する前に、使い手が必要とするものを聞く

店付き住宅を一律に住宅へ直してから売ろうとすると、工事費が先に出ていきます。ところが、買い手が求めるのが工房なら広い作業場が、事務所なら独立した入口が長所になるかもしれません。用途を決めずに取り壊した部分を、後から戻すのは難しいものです。

まずは建物の形を変える工事と、今必要な安全確保・管理を分けます。雨漏りなど把握している不具合は整理しつつ、間取りの大きな変更は、仲介会社や地域の創業支援窓口から需要を聞いて考えます。

相談に持っていくのは、見栄えのよい完成予想図より、現況の間取りと写真です。店舗部分と住居部分の区切り、水回り、電気や給排水設備、駐車場所など、使い方を検討する人が知りたい条件を並べましょう。

自治体の支援が、買い手側の検討材料になることも

幕別町の2026年7月更新の案内では、指定区域の空き店舗等を購入または賃借して出店する事業への支援があります。新規出店者の改修費等には、補助率2分の1・上限300万円という枠があり、空き家も対象に含まれます。工事着手前の相談が必要です。[2]

これは幕別町の条件であり、どの町にも同じ制度があるわけではありません。また、売主が持っているだけで受け取れる補助金でもありません。対象区域、申請者、事業内容、工事時期などの確認が必要です。

自分の地域では「空き店舗」「創業」「商店街」「空き家活用」を手がかりに窓口を探します。補助金の上限額を売値へ足すのではなく、検討する人が使える支援の有無を正確に伝える材料として扱います。

改装の前に、支援の条件を。。地域:対象の区域か。利用者:申請できる人か。時期:工事前に相談。所有者が受け取る補助とは限らない
幕別町の例は同町の制度です。補助の存在だけで売却や採択は保証されません。 図を大きく見る

「カフェにできます」は、調べてから言う

部屋が広い、窓が大きいというだけで、希望する営業ができるとは限りません。立地、建物の現況、改修内容によって、建築・都市計画・消防や営業許可などの確認が必要になります。売却広告の表現も、仲介会社と事実を確認して決めます。

国交省は2024年12月、既存建築物の現況調査に関するガイドライン等を公表しています。過去の建物を活用するにも、どの規定にどう適合しているかを調べる作業がある、ということです。[3]

図面や確認関係の書類が手元にない場合は、ないことを伝えて調査方法を相談します。「昔から店だったから大丈夫」という説明だけで、次の用途まで約束しないようにします。

売る案と貸す案は、残る役割から選ぶ

借りたい人はいても、買いたい人はすぐに見つからない場合があります。貸すなら家賃が入る一方、所有者としての管理、契約上の修繕負担、空室時の対応などが残ります。遠方に住む人が管理から離れたいなら、賃貸への変更が希望に合うかを確かめる必要があります。

今後の小さな出店を考えるうえで編集部が注目したいのは、建物単体の安さに加え、事業を続ける人や相談先とつながれるかという点です。出店支援があっても売却を保証するものではありません。物件の条件と地域の相談先を結び付けておくことが、使い道を広げる準備になります。

売る・貸す。その後の役割は?。売却:代金・費用・引渡し条件。賃貸:家賃・管理・修繕の負担。管理から離れたい希望にも合うか
管理から離れたいという希望に、選んだ方法が合っているかを確かめます。 図を大きく見る

物件メモを「住む人用」から広げてみる

入口、店舗部分の広さ、水回り、駐車場所、残る設備、未確認事項を一枚に整理してください。それを仲介会社と地域の創業支援窓口に見せ、「どんな使い手に合いそうか」を聞くところから始めましょう。

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出典・参考資料

  1. SUUMOジャーナル|幕別町本町エリアの空き施設再生(2026年10月5日公開)
  2. 幕別町|空き店舗等対策事業(2026年7月10日更新、案内は2024年4月改正)
  3. 国土交通省|既存建築物の活用の促進(2024年12月策定資料を掲載、2026年10月9日確認)

情報確認日:2026年10月9日。将来の見方や実践項目は、公開資料を踏まえた編集部の考察・提案です。仮の計算例は本文に条件を記載しています。

この記事について

一般的な売却の考え方を紹介しています。個別の費用や契約条件は、依頼先の不動産会社などに確認してください。