亡くなった親の実家を売るために登記を取り寄せたら、名前のそばに「◇」がある。以前は見なかった印です。死亡が記録されたなら、名義の手続も自動で済んだと思ってよいのでしょうか。
この符号は、所有権の登記名義人の死亡等の情報を示すものです。誰が相続し、誰の名義になったかを決める相続登記とは別です。売却を考える人は、印の有無に加え、現在の所有者の記録と、相続の手続がどこまで進んでいるかを確認しましょう。[1][2]
10月13日からの取扱いと、12月下旬以降の取扱い
死亡についての符号を表示する制度の施行日は、2026年4月1日です。その上で法務省は、次の異なる入口を案内しています。[1][2]
- 2026年10月13日以降にされた登記の申請・嘱託:審査の過程で、添付された戸籍謄本等から名義人となる方の死亡・失踪宣告を登記官が確認した場合に、符号を表示することがあります。
- 2026年12月下旬以降:スマート変更登記の過程で住基ネットへ照会し、個人の死亡・失踪宣告を把握した場合に、戸籍の確認等を経て表示する取扱いが案内されています。
10月13日に、亡くなった人すべての登記へ一斉に印が付いた、という案内ではありません。この記事の確認日は10月21日で、12月下旬以降の取扱いはこれからです。印がないことを、生存している証拠や、相続の問題がない証拠として読まないでください。
公式の記録例では、甲区の「名義人符号表示」を見る
法務省の案内の死亡符号に関する部分には、登記記録例が掲載されています。例では、権利部(甲区)の所有権移転の記録に対し、付記として「登記名義人符号表示」があり、名義人の名前に続けて◇が表示されています。これは公式が示す見本で、実在の取引を取材した事例ではありません。[1]
公式の登記記録例を大きく見るときは、次の二つを別々に追ってください。
- 符号の表示:誰について死亡等が確認されたことを示しているか。
- 所有権の移転:相続等を原因とする移転の記録があり、現在は誰が名義人か。
名前の横に印が増えることと、相続人へ所有権の名義が移ることは同じではありません。死亡符号だけを見て「この家は自分名義になった」と判断せず、登記の履歴全体を照合します。読み分けられない場合は、証明書や取得したPDFを、相談する司法書士等へ見せましょう。
「相続人申告登記もしたから売れる」とも限らない
似た名前の手続に、相続人申告登記があります。これは、自分が登記名義人の相続人であること等を申し出て、申出人について相続登記の申請義務を簡易に履行するための仕組みです。死亡符号の表示とは別の制度で、相続による名義変更の登記そのものでもありません。[3]
法務省は、相続した不動産を売却したり、抵当権を設定したりする場合には、相続人申告登記とは別に、相続登記の申請が必要と説明しています。家族から「法務局には届けた」と聞いたら、何を申し出て、何が完了したのか、完了書類で確認してください。[3]
死亡符号が付いたことを理由に、相続登記の義務がなくなったり、期限が新たに始まったりすると考えることもできません。期限や必要な登記は、いつ不動産の取得を知ったか、遺産分割の状況などに応じて別に確認します。[4]
売る前の相談では、印より「済んだ手続」を伝える
初回の相談で戸籍一式を独力で集め切る必要はありません。まず、手元の登記と、分かる範囲の相続状況をそろえ、何を追加取得するかを聞きましょう。次は編集部が整理した確認メモです。
実家の登記を相談するメモ(編集部作成)
土地の地番・建物の家屋番号/登記を確認した日:__
現在の名義人/◇など気になった記録:__
亡くなった日/遺言の有無/分かっている相続人:__
遺産分割の状況/すでにした申出・登記と完了書類:__
売却したい時期/他にもある土地・建物:__
聞きたいこと:売却前に必要な登記、確認する戸籍等、費用と日程。
依頼先が決まっていなければ、日本司法書士会連合会の相談センター一覧から地域の窓口を探せます。申請書等の手続案内を希望する場合は、法務局公式サイトで管轄と予約方法を確認してください。[5]
新しい印が付いても、家族の間で確かめることがなくなるわけではありません。「死亡情報が記録されたこと」と「売るための名義が整ったこと」を分ける。それが、この小さな◇を見つけたときの、最初の確認です。


