ネットの写真では、すっきりした空室。内覧に行くとソファもテレビもあって、普通に人が暮らしていた。写真がAIで加工されていれば、こんな違いも起こり得ます。
住みながら売る人にとって、私物を出さずに部屋を見せられるのは魅力です。ただし、家具の下や後ろには、撮影時に見えていなかった床や壁もあります。片付いた様子を想像する画像と、現状を確かめる写真を、どう使い分けるか。新しい機能の紹介画像から考えます。
家具を運び出さず、広告写真を作れるようになった
ラルズネットは2026年10月9日、物件登録システム「ラルズマネージャー」の「AI 家具消し」を発表しました。居住中の写真から家具や生活用品を消す、不動産会社向けの機能です。照明やエアコンは通常残す仕様で、掲載時には写真の説明欄にCG加工の旨が自動で入ると説明しています。精度や集客への効果は事業者の説明で、本記事が実物と照合して検証した結果ではありません。[1]
機能を使うのは掲載会社なので、売主が自分でアプリを契約する話とは限りません。担当者から加工を提案されたときに、完成画像と広告上の説明を一緒に見せてもらう。その段階で、元の写真との違いを確かめることができます。
公式の加工例は、何を見せているか

左ではソファやテーブルが床を隠し、右では奥まで床が見渡せます。窓と壁の位置を見比べれば、部屋のつながりを想像する助けになるでしょう。一方、元の写真では見えないソファの背後や下まで、右の画像には描かれています。
ここが、売主も買主も立ち止まりたいところです。元画像で隠れている場所は、この2枚だけでは実際の状態を確かめられません。右の床が本当に同じ状態なのかは、現物や別の写真との照合が必要です。紹介例に誤りがあると指摘しているのではなく、この比較画像から分かることの限界です。
例えば、売主が知っている床の傷や、撤去後に見える壁の色むらがあるなら、担当者へ別に伝える。加工画像がきれいに仕上がったことは、その説明を省ける理由にはなりません。
CGと書けば、窓や床を変えてもよい?
不動産公正取引協議会連合会のポータルサイト広告適正化部会は、画像処理で実際と違う建物の形状・仕様を見せる広告に注意を促しています。例には、存在しない窓を付ける、床材の色を変えるといった加工が挙がっています。これは2021年5月掲載の啓発資料で、今回のAI機能について新しく出た判断ではありません。[2]
資料が示すのは、使った道具の新しさより、何を表示したかが問題になるという視点です。ソファを消すことと、窓を増やすこと。家具を置いて暮らしを想像してもらうことと、備え付けの設備があるように見せること。それぞれ、買主が受け取る情報が違います。
個々の写真が適切かどうかは、加工内容や表示、掲載先のルール等を確認する必要があります。「AI加工は全部禁止」「CGと書けば何を変えてもよい」と、一括りにはできません。
売主が見るなら、家具より先に「変わってはいけないもの」
仕上がりの印象を見る前に、元写真と並べ、窓・扉の位置、柱や梁、床材、固定された設備を確認します。家具を消す対象範囲が広いほど、その近くの壁や設備が変わっていないかを見たいところです。元写真で隠れている部分は、正しいと判断できる資料があるかを担当者へ聞きます。
また、加工画像だけを先頭に置くのか、現況写真も掲載するのか、居住中であることが伝わるのかで、内覧時の受け止めも変わります。売主が「家財を全部動かさなくてよい」と理解し、買主が「空室だからすぐ住める」と受け取ったら、便利な写真が行き違いの入口になってしまいます。
編集部としては、加工画像は空間を想像する補助に使い、現況の確認と切り離さない見せ方がよいと考えます。広告に載る私物を減らせることと、住宅の状態を正確に伝えることは、両立させたいからです。
内覧で伝わる生活の情報にも、写真とは別の価値があります。住みながら売る負担や、当日の説明役をどう分担するかは、毎週末の内覧に疲れた人の記録から考えられます。写真を整えたあとに、暮らしまでモデルルームにする必要があるのか。その問いも残しておきたいところです。


