海の近くで暮らしたい。緑の多い町で働きたい。そんな希望が出てきても、今の家を売って移る決断は簡単ではありません。売却前に地域で暮らす時間をつくり、自分の生活が続くかを試すという順番も考えられます。
旅先で気に入ることと、普段の暮らしを続けられることは別です。主な住まいを残しながら別の地域にも拠点を持つ二地域居住は、移住を判断する材料にもなります。ただし、住まいが二つになる負担を含めて考えます。
国の支援事業は15件採択。成果はこれから
国土交通省は2026年9月30日、二地域居住を促す二つの事業で計15件の採択を発表しました。課題を解決する取組や、地域と二地域居住者をつなぐ支援法人のモデル構築を支援するものです。希望者全員に一律の個人向け補助金を配る発表ではありません。[1]
今回の採択で将来どれだけ定着するか、空き家が何件売れるかは、現時点で結果が出たとは言えません。利用できる取組は地域と募集時期によって違うため、自分の希望地の窓口で確かめます。
静岡県は、賀茂地域1市5町に共通する交通・滞在施設等の課題を整理し、広域連携を目指す取組を掲載しています。三島市・長泉町の取組には、相談窓口、滞在施設紹介、移動手段の提供等が挙げられています。
お試し滞在では、観光の予定を減らしてみる
編集部から提案したいのは、買い物、仕事、通院先への移動、雨の日の外出を含めた滞在です。休日だけでなく平日にも過ごし、生活の時間割を実際に動かしてみます。
自宅で働くなら通信環境やオンライン会議の場所、車を使うなら運転が難しくなったときの代替手段を確認します。「今はできる」ことを、仕事や体力が変わった後も続けたいかという視点で記録を残しましょう。

家賃だけでなく、二つの住まいの合計を出す
仮に月の滞在費が6万円、往復交通費が2万円、追加の光熱・通信費が1万円なら、追加負担は月9万円、半年54万円です。これは費用の足し方を示す架空の例で、特定地域の相場ではありません。
今の家の住宅ローン、管理費、固定資産税などは別に残ります。敷金や初期費用、家具、家を空ける間の管理、制度の補助が終わった後の額も確認します。支援がある期間だけの費用で、長く続けられると判断しないことが大切です。
支出が重すぎるなら、毎月通う以外にも、短期滞在を数回に分ける、季節を変えて訪れる方法があります。試すための費用の上限を先に決めておくと、売却を急ぐ理由に変わりにくくなります。
自宅のローンや契約条件も先に確認する
今の家を残せば全て自由にできる、というわけではありません。住宅ローン返済中なら、自分の利用方法が契約条件に合うか、金融機関に相談します。人に貸すつもりなら、その予定も含めて確認が必要です。
借りる滞在先では、最低契約期間、中途解約、家具や駐車場、自治会との関わり、ペット等の条件を聞きます。お試しのつもりでも、契約の終了条件を先に決めると、合わなかった場合の戻り方まで見通せます。
売るかどうかは、記録を比べる日に決める
暮らしを試す期間を設けても、判断を先延ばしにし続ければ維持費がかさみます。三か月後や半年後など、家族で記録を見返す日を置きます。費用、仕事、通院、地域での付き合いを、良かった点と困った点の両方で比べてください。
売却査定を並行して受けることは、売却の契約を直ちに結ぶこととは別です。手取りの見込みと、売った後に戻る住まいを確保できるかも確認し、試した結果を踏まえて順番を選びましょう。
滞在前に、家族で三つ決める
試す期間、使うお金の上限、売却を判断する日。この三つを決め、日常の移動・仕事・通院の記録を持ち帰ると、印象だけの移住判断から一歩進めます。


