実家の近くのスーパーが閉まると聞いたら、まず気になるのは次にどこで買うかでしょう。家を売ることまで考えているなら、「この辺りは不便になるのか」「もう少し早く動くべきだったか」と、話は急に大きくなります。
ただ、企業の閉店計画だけで、その家の住みやすさや売値までは分かりません。確かめたいのは、車を使えない日にも、食べ物を手に入れる方法が残るか。スーパー再編のニュースを、実家での暮らしに引き寄せて読んでみます。
100店閉鎖というニュース。でも、近所の店が決まったわけではない
食品スーパーを展開するU.S.M.Hは、2026年10月9日の決算説明会で、2030年度までの100店閉鎖計画を説明しました。一方、12日公表の質疑応答では、対象がすべて決まっているわけではなく、立地や店舗の老朽化、今後の人口動態などを見て判断するとしています。新規出店の計画もあり、閉鎖数をそのまま地域の店の純減と読むこともできません。[1]
まず分けたいのは、会社全体の再編計画と、自分が利用する店舗の正式なお知らせです。前者を見て、近所の店も閉まると決めつけない。後者が出たら、最終営業日と次の買い物先を具体的に調べる。この順序なら、まだ確かでない話で住み替えを急ぐことを避けられます。
今回の資料は、個別の住宅価格への影響を検証したものではありません。閉店が決まった地域でも、別の店の距離や交通、買主の暮らし方によって条件は異なります。「スーパー閉店=査定額が何%下がる」といった数字を、ここから作ることはできません。
徒歩10分の「10分」は、帰り道にも当てはまるか
買い物の便利さは、家から店までの線を引けば終わり、とはいきません。行きは手ぶらでも、帰りには牛乳と野菜と、買うつもりのなかった特売品が増えています。坂道や横断歩道は、荷物を持つと存在感が変わります。
実家に帰った日に、一度だけでも、普段買う量の荷物で道を歩いてみる。それだけで、地図の距離から抜け落ちた条件を拾えます。親が「近い」と言う道を、子が「遠い」と感じることも、その逆もあるでしょう。大切なのは、どちらの感覚が正しいかを争うことより、今の体力と実際の経路を合わせることです。
農林水産政策研究所の「食料品アクセスマップ」は、地域を広く見る入口になります。2020年のデータでは、店舗まで500m以上あり、車の利用が困難な65歳以上の人を食料品アクセス困難人口として推計しています。距離だけでなく車の利用も条件に含めている点が、この問題をよく表しています。[2]
ただし、この地図は現在の個店の営業状況や、特定の家の暮らしやすさを判定するものではありません。2020年の地域像を知り、今の店・道・交通を別に確認するために使う資料です。
「別のスーパーがある」の先で、何を確かめる?
代わりの店が見つかったら、実家の買い物を一回分、置き換えてみます。例えば次のように、方法ごとに必要な条件を書き出すと、足りないところが見えます。以下は編集部が作成した比較の観点です。
| 代わりの方法 | 実際に確認すること |
|---|---|
| 少し離れた店へ歩く | 帰りの荷物、坂、休める場所、雨の日の経路 |
| バスや送迎を使う | 買い物に使える時間帯の往復便、停留所までの道、運賃 |
| 配達・宅配を使う | その住所が対象か、注文方法、最低注文額、配達料、不在時の扱い |
| 家族が買って届ける | 毎週続けられる頻度と、家族が来られない日の代案 |
移動販売や買い物支援を探すなら、農林水産省の食品アクセスに関する情報ページで取組の種類をつかみ、その後に自治体や事業者の現行案内で対象地域を照合します。国のページに事例が載っていることと、実家の住所で利用できることは別です。[3]
売る・住み続けるを決める前に、車のない一週間を考える
今は運転できる人でも、修理や体調不良で使えない日はあります。将来の免許返納をいきなり大きな家族会議にするより、「来週、車がなかったら」と短い期間で考えるほうが、話を始めやすいかもしれません。
代わりの方法で無理なく回るなら、店の閉鎖だけを理由に住み替えを急がなくてよい。一方、買い物が誰か一人の送迎に頼り切りになるなら、今後の住まいを考える理由になります。ここで比べるのは、家の広さや築年数だけでなく、暮らしを維持する手間と、その担い手です。
売却を相談するときも、「近隣スーパーあり」で話を止めず、営業中の店、現実の経路、使える交通を担当者と確認したいところ。住みやすさを具体的に説明することは、残る家族にも、次に住む人にも役立ちます。


