家を売って施設へ移るとき、費用の表と間取り図は何度も見直すと思います。でも、日曜に家族とお茶を飲む時間は、引越し先でも続けられるでしょうか。会いたいときに会えるかどうかは、居室の広さと同じくらい、暮らしに関わることです。
施設選びでは、そんな希望も遠慮せず話してよいと思います。見学では「家族と会えますか」から一歩進め、誰と、いつ、どう過ごしたいかを具体的に伝えましょう。ここでは、入居する本人と家族が、家を手放す前に確かめておきたいことを整理します。
家族との時間を、住まいの条件として考える
家族との関係を住まい選びにどう織り込むか。その手掛かりになる取材が、2026年10月12日のSUUMOジャーナルにあります。仙台市の「ライフの学校」で、知的障害のあるYさんと、介護が必要になった母親が、別々の支援制度を利用しながら同じ建物で過ごした例です。
母親は特別養護老人ホーム、Yさんは共生型ショートステイを利用。同じ建物の中で行き来し、母親の看取りまで9カ月間を過ごしたと紹介されています。
個別の調整で実現した例なので、一般的な面会や同居の条件を示すものではありません。それでも、この取材からは、必要な支援と家族との関係を一緒に考える視点が得られます。自分の施設見学でも、「週末は一緒にお茶を飲みたい」「外出できる日は家族と食事をしたい」と、続けたい場面を言葉にしてみてはどうでしょうか。
見学は「会えますか」より、普段の場面を尋ねる
面会の回数・時間・予約方法、家族と食事をする場所、外出や外泊の扱いを具体的に聞きます。感染症の流行時などに通常と異なる運用があるなら、連絡方法も確認しましょう。訪問する家族が通い続けられる距離と交通手段も大切です。
日中の共有スペースは、見学時間だけ整っているかではなく、普段誰がどう使うかを尋ねます。行事があることと、自分が無理なく参加できることは別です。静かに過ごす選択や、好きなことを続ける支援についても聞いてみてください。

特養と有料老人ホームでは、入居の入口が違う
希望する過ごし方を伝えたら、その施設が自分の状態で利用できる種類かも確かめます。例えば特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上が新規入所の対象です。要介護1・2でも特例入所の仕組みはありますが、事情の確認が必要で、希望だけで入れるわけではありません。厚労省の指針も、介護の必要性や家族の状況等を勘案した入所の検討を示しています。[2]
有料老人ホームなど別の種類の住まいでは、契約や受入れ条件が異なります。施設への入居が確定しているかを確かめてから、家を手放す日程を詰めることが重要です。「見学できた」「申込みをした」と「入居が決まった」を分けて整理します。
費用は、毎月の合計と途中で増える項目を見る
提示された月額に何が含まれるか、食費、居住費、介護サービス、医療、日用品などを項目ごとに確認します。一時金のある契約なら、退去・死亡時の返還条件、償却、入居前の取消しの扱いを、契約書と重要事項の説明で確かめます。
家を売った代金で何年分まかなえるかを考えるときも、今の月額だけを掛け算しないようにします。家の売却費用や税金を引いた手取り、年金などの収入、別に残す生活資金を整理し、費用が増えた場合の余裕を見ておきましょう。
介護の状況が変わった後も、同じ場所で暮らせるか
身体の状態や必要な医療が変わった場合、同じ居室で対応できるのか、別の施設への転居が必要になり得るのかを質問します。本人や家族が何を優先したいかも伝え、現在の対応範囲を具体的に説明してもらいます。
将来も必ず住み続けられると期待するのではなく、対応できないときの相談先まで確認します。家族とのお茶、地域の人とのおしゃべり、一人で落ち着く時間。本人が大事にしたい日常から条件を絞ると、見学で何を聞くかも決まってきます。家の売却は、その暮らしを支える日程と資金の話として、入居の準備と並べて考えましょう。
見学の前に家族で決めること
続けたい日課/会いに来る人と頻度/毎月使える金額/介護が増えたときの希望。この四つをメモし、施設の回答と入居の確定時期を、売却の日程と並べて確認しましょう。


